認知症の人への服薬について考える【服薬拒否】

介護の現場
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こんにちは(^ ^)

介護施設で働くゆるふわ看護師 すのです。

介護施設にいる利用者はほぼ全員が何かしらの薬を毎日飲んでいます。

自分で上手く飲むことができない方は、介護士が服薬のお手伝いをします。

 

その薬は本人のもので間違いないか?今日の日付けのものか?飲む時間に間違いないか?

など、毎回毎回慎重に確認をして服薬の介助をします。

薬は飲み忘れや、飲むタイミング、ましてや他人の薬を飲んでしまうと命取りになってしまう事もあるからです。

スムーズに飲める方は良いのですが、中には内服を拒否し飲んでくれない方も時々おられます。

特に認知症の方の服薬拒否には頭を悩ませる施設も多いと思います。

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なぜ服薬拒否をするのか?

自分は健康でどこも悪くない

認知症の方は特に病気の自覚がなく、何のために薬を飲んでいるのか理解していません。

病気で病院にかかっていることさえ忘れてしまいます。

痛みや症状がないのは薬のおかげなのに、それを理解しておらず自分は健康なので薬は必要ない、飲みたくないと拒否します。

 

薬の飲みすぎは体に悪いという誤解

高齢者は病気をいくつも抱えており、その為薬の種類も増え数も多いです。

薬をたくさん飲んでいると体に悪いと認識している人もいます。

 

多い人は一度に10錠以上飲む人も珍しくありません。最近はテレビや雑誌などで、薬の飲み過ぎは認知症になるリスクが増える、飲みすぎると副作用で別の病気になるなど、間違った安易な情報が飛び交っています。

テレビの健康番組で「10錠以上飲んでいる人は認知症になりやすいです」と具体的に報道されており、それを見た利用者が次の日医師に「私は12錠飲んでいる!薬を減らしてください」とクレームを入れるというのを経験しました。医師も私も開いた口が塞がりませんでした。

 

体調不良を薬の副作用だと思っている

「この薬を飲むと、いつも調子が悪くなる」と言うのもよく聞きます。

体調不良を薬の副作用と思い込み拒否をします。思い込みの場合もありますが、高齢者は薬の副作用も出やすいので、認知症だからと訴えを受け流さずに実際に副作用なのかどうか観察は大切です。

訴え続くようなら、副作用の可能性はありますので医師に相談して見ましょう

苦いなど味が苦手

薬の中には、何とも飲みずらい味のものもあります。

特に漢方薬は粉薬で苦くて独特の匂いがあり、さらに量も多く飲みにくいです

錠剤でも、OD錠(口腔内崩壊錠)は口の中に入れるとすぐに溶けるので飲み込みが悪い人でも飲みやすいようになっていますが、すぐに飲み込まず、いつまでも口の中に入っていると薬の味がしてきて、中には口の中が苦くなってしまう事もありますので、利用者は拒否します。

そもそも薬だと認識していない

何か知らないけれど変なものを飲まされている

認知症の場合、薬だということを忘れて、介護士が自分に毒を飲ませ用としているなど思い込んでしまう時もあります。

ひどい場合は、飲んだふりをして、見ていないところで口から出し捨てるという事もあるので飲み込むまで要注意です。

 

拒否はないが、機能的に飲み込みにくい

高齢者は日に日に嚥下(飲み込み)の機能も衰え、食べ物や薬も飲み込みにくくなってきます。そういった方の食事は刻んで小さくしたり、とろみをつけ飲み込みやすくしたりと工夫されています。

拒否ではないけれど、薬が飲み込めず上手く内服できなく口から出してしまう場合もあります。

やってはいけない内服介助

拒否のある認知症の方への内服介助は、本当に大変ですが、手段を選ばずに口に入れてしまえば良いというものでもありません。介護に関わるならこれらの方法はできるだけ避けたほうがいいと思います。

お菓子等と嘘をつき口に無理やり入れる

錠剤を「ラムネ菓子」だと嘘をつき、口に無理やり入れ、急いでお茶で流し込ませる。

どうしても飲んでくれない場合、使ってしまいがちですが飲んで見たら「ラムネ菓子」ではなかったとわかった場合、「あの人は私に嘘をついた」とプライドを傷つけ、信用を失ってしまう場合もありますので気をつけましょう。

 

ご飯に混ぜる

一昔前は普通にやっていたと聞きますが、ご飯に粉薬をふりかけのようにかけ、錠剤をおかずに混ぜ提供するのは、人としての尊厳が守られていないように思います。

尊厳の問題だけでなく、実際ご飯に薬がかかっていると、美味しいでしょうか?

もし、薬がかかっているのを知らず、単純に「ここのご飯は不味い」と認識したなら、食事摂取量も落ちてしまいます。あとで述べますが、混ぜるならご飯ではなく、別の方法で考えましょう。

 

医師の許可なしに錠剤を砕いて粉にする

飲み込みが悪い人や、服薬を拒否する人は口の中に入れても吐き出すことがあります

認知症の方は飲み込めず口の中にいつまでも残り異物だと思い吐き出したり、入れ歯の隙間に挟まったままで飲み込めないというケースもあります。

 

そういった場合、粉だとスムーズに飲めるという理由で、医師の許可なく何でもかんでもすり潰し粉にしてしまう場合があります。錠剤によってはすり潰してしまうと、危険な薬もありますので、その場合は医師に確認し許可をもらって下さい。

 

薬には一つの種類でも、様々な形態のものがあります。飲みにくい場合はゼリーや粉や水薬と色々ありますので医師に相談してみましょう。場合によっては、同じ効果で錠剤の数を減らしてもらえる事もできます。

スムーズに内服してもらう為に

薬の説明をし必要性を理解してもらう

なぜその薬を飲む必要があるのかを説明し、納得してもらうと、意外とスムーズに飲める事もあります。

ただ認知症のため、拒否の度に何度も説明が必要な場合もありますが、根気強く優しく説明してあげましょう

 

嘘をついて騙すのではなく上手に声をかける

上記の場合もそうですが、声の掛け方にも工夫が入ります。拒否があるからと介助者がイライラしながら強い口調で説明しても逆効果でますます拒否は強くなります。

優しい口調でゆっくりと笑顔で声をかけましょう。また声をかけるタイミングもよく考え、機嫌が良いタイミングを見計らい内服を促すと意外にもスムーズに内服できます。

 

どうしてもダメな場合は、別の人が声をかけるとすんなり飲める場合があります。私達はよくやりますが、一人の介護士がしつこく声かけせずに、人を変えてみるのもひとつの方法です。

飲むタイミングを見極める

認知症の方は特に機嫌が悪い時や、不穏な時はいくら声をかけても逆効果です。

また食後の薬の場合、いつも食事でお腹がいっぱいになり、もうこれ以上薬は飲めないという人もいます。食前の空腹時なら飲める場合もあります。そういった場合医師に相談をし食前でもいいのか?等、相談してみるという方法もあります。

どういう時に服薬がスムーズにできるかタイミングを見極める事も大切です

とろみゼリーなどを使う

飲み込みが悪い、口から出してしまう人には、服薬ゼリーなどもドラッグストアに市販されています。

ゼリー状のオブラードなので、普通のゼリーよりしっかりとして溶けにくく薬を包み込み、喉につるっと入り利用者にも好評です。

先ほど述べた、「ご飯に薬をふりかける」のではなく、こういったものを利用したほうが良いです。

その他、ゼリーに変わるものとして、少量の「ジャム」「オリゴ糖」「チョコクリーム」などでも喜んで飲んでもらえます。

はちみつは抵抗力の弱い1歳未満の乳児やお年寄りには使用を控えましょう

まとめ

認知症の方への服薬は、拒否がある場合とても難しく、介護する人は誰しも経験する事です。

しかし薬は医師に処方されたもので、利用者の命を守るため確実に内服しないといけません。

利用者をしっかり観察し、嚥下の状態や精神状態をしっかり観察し、適切な声かけや介助を心がけましょう。

困った時の薬の相談は、決して自己判断せずにかかりつけの医師に相談するようにしましょう。